《MUMEI》

キーンコーンカー……


ガラッ!!


せ、セーフ……。


頑張って走った甲斐あって、俺は何とか遅刻せずに席に着くことが出来た。


すると、途端に嫌な視線を受けた。


まあ、いつものことだけど……。


耳を済ますと、


「何アイツ良い子ぶっちゃんてんの。」


「本当、遅刻すれば良かったのにね。」


俺の悪口が聞こえた。


これもいつものことなんだけど…。


自分の悪口を聞くのは、やはり良い気分がしない。


今日もこんな一日が始まるのか。


そう思うと、一気に体が重くなった気がした。


その時、ふと脳裏にグレイドが浮かんだ。


そうだ。今日は一人じゃないんだ。


俺は自分に微笑んでくれた、グレイドの偽りの無い笑顔に自然と顔が綻んでいた。

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