《MUMEI》

昼休み……


クラス内の緊迫した空気が解かれる時間。


廊下からも明るい声が聞こえて来る。


俺はいつもは細々と教室の隅で弁当を広げるのだが、この日は何となくそんな気分では無かった。

フラフラと教室を出て、誰かに導かれる様にして向かった先は屋上。


何時にもまして和やかに吹き抜ける風が心地良い。


俺は、緩んだ口元を更に綻ばせながら、ゆっくりとフェンスに近付くと、そこに胡座をかいて持って来た弁当を広げた。


…まあコンビニ食なんだけど…。


俺はフッと苦笑すると、割り箸を割って、早速目の前の弁当を片付け始めた。


ところが、一口目を口にした時、屋上の扉が勢いよく開いた。


バンっ!!!


驚いて見上げると、いかにも柄悪そうな二人組が立っていた。


俺はそのうちの一人が誰だが分かると、思わず顔を背けた。


だが、時既に遅し。


今までの穏やかな空気が一気に凍り付いた気がした。


二人組の奴等は、俺の姿を見つけると、不適に笑いながらゆっくりと俺に近付いてきた。


下を向いているため、奴等はどんな顔をしているか分からないが、その低い笑い声でだいたいの想像ついた。


物凄く怒っていると…。

昼食時間まで自由がないのか…。


俺は奴等に聞こえないようにため息をつくと、静かに立ち上がった。

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