《MUMEI》

誰だ?!


俺の許可も取らずに……。


腹のそこから怒りが込み上げて来るのが分かった。


しかし、声の主を確認した途端、一気に冷めた。

まあ、冷めたと言うよりも、むしろ飽きれたの方に近いが…。


何故なら蓮翔ちゃんは、目の前の、古びた緑色の長椅子に座って…バナナを食べていたからだ。


モソモソと口を忙しく動かしながら、


「お前も食う?」


俺にバナナを突き出して来た。


「ん。」


思い切り周囲の空気をぶち壊しているが…まあ取りあえず貰っとこう。


「良いよな、颯ちゃん。」


すると、さっきの言葉に付け足す様に蓮翔ちゃんが尋ねて来た。


今度は口に何も入っていなかったのだろう、声がくぐもって無い。


「……。」


正直言うと、駄目だ。


いや、来たら行けない。


その時、岡部の言葉が脳裏を霞めた。


「お前に取って、コイツ等はなんだ?」


すると蓮翔ちゃんはニカッと笑って、


「大事な仲間だよ!!!」


その言葉に、“嘘”という言葉は微塵も感じられなかった。

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