《MUMEI》

立ち上がると、真っ先に胸ぐらを掴まれた。


目の前には、いつも俺を手荒く扱っている奴が物凄い形相で睨んでいた。


もう一人は対照的にゆっくりと近付きながら、この光景を傍観している。


俺の胸ぐらを掴んだ奴は、相変わらずの鋭い目付きで俺を舐め回したあと、


「何ニタニタ笑ってんだよ。」


低い声でそう言い放った。


どうやら俺は、教室でも自然と顔が綻んでいたらしい。


それがそいつ等にとって気に食わなかったのだ。


「何黙ってんだよ。

舐めてんのかてめぇ?」

傍観していた奴もじわじわと俺に近付きながら、食って掛かった。


後ろはフェンス、左右はそれぞれこの二人組に阻まれている。


まさに絶対絶命だ!!


「何とか言えよ!オラァ!!」


更に何も言えないでいると、胸ぐらを掴んでいた手がパッと離れた。


それとほぼ同時に、二人の拳が飛んで来た。


俺は成す術なく、目を閉じ、両腕を掲げて顔を隠すしか無かった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫