《MUMEI》 ドスッ…と、鈍い音がした。 だが、不思議と痛みは感じない。 ……? うっすらと瞼を上げると、 「グレイド!!!」 家にいた筈のグレイドが俺の目の前に立っていた。 グレイドは俺の声にピクっと、尖った耳を動かしたが、黙ったままだった。 そして、数メートル程先に倒れている、柄悪そうな二人組に近付いて行く。 更に、二人に近付いて行くにつれて、だんだんと綺麗に折り畳まれた羽根が広がっていった。 グレイドに吹っ飛ばされた二人は、動かずに、ただその場で体を震わせているだけだ。 まあ、無理もないな、俺も初めて見た時は、かなり驚いたんだから…。 「お前ら、殺されたいのか……?」 ある程度、グレイドが二人に近付くと、低く、凄みのある声でそう言った。 二人は、心底震え上がった様だ。 「う…うわぁぁあ!!」 たまらず我先と先頭を取り合いながら、屋上から出て行った。 しばらくすると、グレイドの大きなため息が聞こえた。 「すみません…。」 「……まあ、これで仮返せたな。」 「え!?」 良く話しの意図が見えずに聞き返すと、 「助けてもらった礼だ。」 グレイドがほんのり頬を赤く染めあげていた。 律儀なんだな。 俺は未だに頬を赤く染めているグレイドを見上げて、小さく微笑んだ。 前へ |次へ |
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