《MUMEI》

つまり、オレが辿るアプローチは、遅い人波が作り出す渋滞をパスし、瞬時に早い人波に乗り換えるという高度なテクニックを要求される――…!


タイミングを逸すると左側へ追いやられ、長いエスカレーターを昇りきるまで、立ち止まって待つ羽目になってしまう。



まさに動物的な勘だけが頼り――…


リスキーだが、上手くすれば大幅なタイム短縮を遂げることができるライン――…!


百戦錬摩の乗り換えレーサーだけが成し得る業だ!



オレは女レーサーの尻を睨み(見つめ)ながら、消火栓の左側を通過した!


そして彼女のスリップストリームから脱け出すと、人波の僅かな隙を突いて、真ん中のエスカレーターに通じる人の列に合流しようとした…。



――…その時!


心の声『あ!…あれは!!』

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