《MUMEI》

「須藤…。」


蓮翔ちゃんにそう言われた奴は、微かに口元を吊上げた。


「相変わらず仲良いんだな。

ああ、滝澤颯馬さんとは初対面でしたね。

初めまして。

昔の傷はもう大丈夫なんですか?」


そう言って嫌味ったらしく笑った。


「おい、須藤!てめ……」


俺は今にも殴り掛りそうな蓮翔ちゃんを手で制すと、


「初対面の奴に対する態度がそれか?

それと…昔の傷ってなんだ?!」


少し凄みを効かせて言った。


すると、須藤はうろたえることなく、むしろ笑いながらこう答えた。


「決まってるでしょう?

八年前、あなたがこの球場で負わされた傷のことですよ。」


そう言って、視線を俺から、球場へ流す。


「何が言いたい…?」


「はあ?」


「昔のことを蒸し返して何が言いたいんだ!!」


「そうだ…。

狙いはなんだ…!!」


今さっきまで黙って聞いていた蓮翔ちゃんも、堪らす言い返した。


須藤はそんな俺達を見ながら、何処か楽しそうに目を細めると、


「別に……。」


焦らすように呟いた。

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