《MUMEI》

『璃久。あ〜んっ!』


『やりません!』


『ふ〜ふ〜は?』


『自分でして下さい!』


“…もう(怒)
何なのコレは…?赤ちゃんプレイのつもり!?”


稜兄は膨れっ面になりながらも、さらに続けた…。


『なぁ〜璃久〜!』


甘えた声で話しだしたかと思ったら、どんどんエスカレートしていった…。


稜兄は、テーブルの下からソッと手を伸ばし、私の太ももを撫でる。


渉に気付かれないように、必死で声を出さなかったけど、私の落ち着かない態度を見て疑問に思った渉は、テーブルの下を覗きこんだ。


そのタイミングを見計らって稜兄が、スカートの中に手を入れる…。


さすがの私も叫びそうになった時…


『いい加減にしろよ!!』


渉がキレた。


『…何のことだよ?』


稜兄は、とぼけた顔で聞いた。


『なぁ?
何で渉がキレるんだよ?
知ってるよな?俺と璃久は付き合ってるんだぞ。
何が悪いんだよ?』


『……うっ……。』


渉は私の顔をチラっと見て、まだ食事中なのに、部屋に戻っていってしまった。


『…稜兄!!
一体何を考えてるの?
私にセクハラして、困らせて…渉を怒らせて…。
いつもの稜兄じゃないし。何か考えてるんでしょ?
おかしいよね(怒)!?』


『……璃久。渉の方がおかしいと思わないか?』


『……?』


『渉の学校での評判は?』


『何?急に…
評判はいいと思うよ。
無口だけど頭良くてかっこいいし…お金持ちだし。』


『だろ?
俺もそうだった!!
高校の時モテモテで、かなり女遊びしたもん。』


『へぇ〜。
…で?……何が変なの?
渉は、稜兄と違って真面目にやってんじゃん。』


『そこだよ!!
…おかしいだろ?アイツ女っ気なさすぎなんだ…。
渉の口から女の話、聞いたことないんだよ…。
きっとモテるはずなんだけどな〜。』


『あ〜そういう事か。』


『俺…渉はコッチ系なんじゃないかって疑ってたんだ…璃久が家に来るまで。』


『コッチ系って…?』


『…だから!!
男好き…ってことだよ。』

『そんな!?』


『いやっ。落ち着けよ。
璃久が家に来るまでは…って言っただろ?』


『…うん。
どういうこと!?』


『渉が、家に女を連れて来たのは…璃久が初めてなんだよ。』


『うん。…でもそれは
バイトがあったから…。』


『ま〜そうだけど。
璃久のことになると、やけに突っ掛かってくる…。
さっきの態度も見ただろ?すげぇ怒ってた。璃久に気があるならさっさと手を出せばいいのに…。』


『…さっさと(怒)?』


『悪い!
言い方悪かったな。
とりあえず璃久にも協力してほしいんだよ。
な〜。渉が何考えてんのか知りたくねぇ?』


『…協力って?』


『俺とラブラブして渉に見せ付ける!!』


『…それで?』


『それだけ!
で渉の反応を見るんだ。』


『…う〜ん。』


私は、そんなにノリ気じゃなかったけど稜兄の作戦は勝手に実行されている。
言われてみれば、渉が女の人の話をしているのなんて聞いたことがない…。
私は、渋々、稜兄の作戦にノってみることにした。

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