《MUMEI》

…あたし、男に生まれてりゃ良かった…


「あら?いっくん!」


「あ、ケーコタン!」


「まあ!恵子ちゃん。」


「お久し振りです、おばさん。」


「まあまあ、立派になられて、今年からこちらの大学ですって?」


「はい、下宿なもんですから、色々と買い物が大変で…」


「まあ、そーなの?ほほ…」


…やっぱり野球は、諦めよう…


今から少しずつでも、女らしくしとかないとあたしなんて、四年半じゃ間に合わない…


「今度、家へも遊びにいらしてね。」


「はい、是非。」


「ばいばい、ケーコタン。」


「ばいばい、いっくん。ごめんください。」素敵な笑顔で、挨拶するケーコタン。


「ほー、素敵なお嬢さんになって…ママの若い頃みたい…」
そう言いながら〜チロリ…いっくんを見るママ。


「言うな、言うな!言いたいこた、分かってんだ。眼光線飛ばすな、宇宙人!」


「まだ何も、言ってやしないわよ、子猿モンチッチ。それにしてもママの娘なら、もっと可愛いはず…」


「言ってんじゃないか!待て!」


…これからだよ、あたしだって!!…

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