《MUMEI》
服装の謎
『一緒に寝て』と言ってきたのは紫だったが、紫の無邪気な寝顔と温かな体温は、癒し効果があるらしい。

おかげで、俺は爽やかな朝を迎える事が出来た。


旦那様と父が帰ってきたのは、朝食を終え、庭の手入れを母と紫と三人でしていた時だった。


「忍…また、背が伸びたね」

「は、はい」


俺は、旦那様とほとんど同じ身長になっていた。


子供の頃、大きく感じた旦那様は、今では俺より頼りなく見えた。


(多分、筋肉の違いだろうなあ…)


お互い薄着のせいか、体型の違いがはっきりわかった。


(それにしても…)


俺は、旦那様の隣にいる父を見つめた。


「お父様、暑くないの?」

紫が心配するように、半袖のつなぎの作業着を着ている俺と母・それに、半袖短パンの紫と違い


父は、長袖の執事服に、手袋までしていた。


「生地が薄いからな」


そう言いながらも、さすがの父の額にも汗が浮かんでいた。


「じゃあね」


旦那様は、そんな父を気遣ってか、早々に会話を終了させ、父と本邸に戻っていった。


(おかしくないか?)


軽装の旦那様の隣で、何故父が正装をしているのか、この時の俺にはわからなかった。

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