《MUMEI》 週に一度の憂鬱「さ、祐也!部活行きましょう!」 「う、うん…」 俺は、志貴に引きずられるように、体育館のステージに向かった。 普段は部室やその周辺で稽古をするが、俺達演劇部は週に一度はステージで練習する。 (恥ずかしいんだよな、これが…) ステージに合わせたセットを確認したり、役者が度胸をつける為に必要な事だとはわかっていても、俺は毎週この日が一番憂鬱だった。 それに対して志貴は、今日がバイトが休みで、俺と一緒にいるのが嬉しくて仕方ない様子だった。 「こんにちは〜」 「こんにちは…」 俺達が体育館に入ると、演劇部員はもちろん (これが、嫌なんだよな) 厳と朝倉さんのいる男女バスケ部員・それに、体育館の一角を使っている体操部員達が一斉にこちらを見た。 去年は部員以外に練習を見られる事は無かったから、俺は今年初めて経験するこの環境が苦手だった。 「祐也〜、今日も可愛…イテッ!」 「何やってんだ厳!」 (本当に何をやってんだか) 俺に手を振っていた厳は、パスされた事に気付かず、ボールを顔面で受け取っていた。 「同じ顔で間抜けな事すんなよ」 ステージ上から頼が呆れていた 前へ |次へ |
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