《MUMEI》
喋れない静
「それじゃあ、主役も来た事だし、始めましょうか」

部長の言葉に各自持ち場についた。


と言っても、まだセットは出来ていないし、さすがに他の部の練習中だから、音も入れられないから、裏方は最初見学した後、部室に戻って裏方班だけでミーティングを行う。


ちなみに、俺の衣装は全て守の店から借りるが、他の出演者の衣装は衣装班が用意するから、衣装班は被服室で別行動をとっていた。

「二人の静が最初に会うシーンだから、しっかりね」


部長の言葉に、俺は用意された椅子に座った。


俺の隣には、頼が立っていた。


(でも、俺、セリフ無いんだよな)


俺の役 姫宮(ひめみや) 静 は、身内や執事の前以外では、喋ってはいけない設定になっていた。


その執事を演じるのは頼だった。


「よ〜い、スタート!」


『静様、わかっておられますね?』


俺は、頼の言葉に不機嫌そうに無表情で頷いた。


『もう少し、機嫌よくできませんか?』


頼が馬鹿にしたように、クスリと笑う。


俺は、かなり間をおいて、できるかぎり極上の微笑みを浮かべた。


そんな俺に、次々と人が話しかけてくるが、頼が適当に相手をして追い払った。

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