《MUMEI》 もう一人の静人がいなくなると俺は、頼の袖を引っ張ってある方向を指差した。 実際にはまだ用意されていないが、そこには飲み物が用意されていた。 『わかりました。知らない人にはついて行ってはいけませんよ』 俺は無言で頷き、頼の背中を押した。 『こんばんは』 そのすぐ後に現れるのが もう一人の静 志貴が演じる藤宮(ふじみや) 静だった。 俺は、その極上の微笑みに、口を開きかけ、慌てて閉じた。 『今日は美しい満月ですよ』 そう言って志貴は、俺を立たせた。 (どこで覚えるんだ? こんなの?) そのまま、俺は志貴の優雅なエスコートで、バルコニーに移動する。 バルコニーのセットはこれから橋本君が作る。 『ほら、美しいでしょう?』 志貴の言葉に俺は頷いた。 『でも…』 志貴の手が、俺の頬に触れた。 俺は、慌てて下がる。 『あ…失礼』 そう言って、志貴は何故か自分の手を不思議そうに見つめた。 『静様!どこですか?』 頼の声に慌てて移動する俺の背中を見ながら、志貴が呟いた。 『何を考えているんだ…私は…』 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |