《MUMEI》 ギャラリー「カット! オッケー!」 部長はかなり嬉しそうだった。 「やっぱり二人共バッチリね!」 「俺は?」 「嫌味な感じがバッチリ!」 部長の言葉に頼は苦笑した。 「でも、本当に頼君もいい感じよ。この分だと、変態男爵も期待出来るわ」 (う、…そうだった) 坂井さんはさりげなく言ったが、頼のもう一つの役 間宮(まみや)男爵は… 男爵は… 「期待してて。そっちも頑張るからさ」 笑顔の頼を見て、俺は背筋が寒くなった。 「じゃあ、志貴さんメインのシーン続けていっちゃおうかな」 「はい!」 (元気だなぁ、志貴は) 俺は、感心しながら舞台の端に移動した。 (ん? あれは…) 体育館の入口付近で、ウロウロしていたのは、松本だった。 (厳を見に来たのかな?) その時、丁度男子バスケ部が休憩に入った。 彼等は当たり前のように、ステージを向いて座り、志貴の演技を見学していた。 (せっかくだし、呼んでやるか) 「松本。よかったら、見てく?」 「え?」 「え、誰その子?祐也の知り合い?」 「バッ…」 厳の言葉に、松本は体育館を飛び出して行った。 前へ |次へ |
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