《MUMEI》
父の訪問
「な…んで」


その夜


今晩も俺と一緒に寝たいと言う紫を何とか母に押し付けて、俺は一旦自分の部屋に戻ってきた。


そこに、正装した父が座っていた。


座っていただけならまだ良かった。


父の目の前には、俺が旦那様との情事の為に持ってきたローションとゴムがあったのだ。


「昼間の、旦那様を見るお前が気になってな。

…まさかお前、こんな事を学ぶ為にあの学校を選んだわけじゃないよな」


俺は何も答えられなかった。


そんな俺の顔を見て、父はため息をついた。


「こんなのは、執事の仕事じゃないし、旦那様がお前を受け入れる事は無いぞ」

「違…う。俺。俺が、旦那様を…受け入れるんだ」


動揺する俺を見て、父はまたため息をついた。


「言い方が悪かったな。
旦那様がお前と性行為をする事はあり得ないんだ」


『あり得ない』


その言葉に、俺はうちのめされた。


「説明するから、座りなさい」


そう言われても、体の動かない俺を、父が誘導して椅子に座らせた。


そして、父は扉に鍵を閉めた。


「一度しか説明しないから、よく聞きなさい」


その言葉に、俺は意識を何とか父に集中させた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫