《MUMEI》
拒絶
「…昔、私がお前に旦那様は『大人と女性は信用していない』と言っていたのを覚えているか?」


父の言葉に俺は頷いた。


今は、清也様が亡くなり、姫華様もいないから、例外無く全ての大人がそれに…

そこまで考えて俺は顔を上げた。


「お、父様は?」


「残念ながら、執事の私も信用されていないよ。

元々、私は清也様の執事だったから、旦那様は私が義務でお側にいるのだと思っている。

まぁ…実際、そうだが。

私の主は今でも清也様だからな」


父は苦笑した。


実際、父のように主を一人と決めるのは、ある意味藤堂家では普通だったから、俺は仕方ないと思った。


(俺だって、嫌だし)


俺は、奥様と使用人の間に生まれた子供の顔を思い浮かべた。


「そのせいだろうな、きっと」

「何が?」

「旦那様は、大人や女性に触れるのも、触れられるのも嫌がる」


父の言葉に、俺は父の服装と手袋を見つめた。


「忍。そんな旦那様が、普通の性行為が出来ると思うか?」

「そ、れは…
だから。だから、俺が!」

「これを見ろ」


父は、持っていた封筒から数枚の写真を取り出して、俺の目の前に並べた。

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