《MUMEI》

「やあ、美作さんのところの乙矢君じゃないか。あけましておめでとうございます。」

乙矢……
着物同士で肩並べてたら俺超見劣りしちゃうじゃん……!
一歩下がって少しでも小柄に見えるようにしてみたりね……何この恋する漢心。


「……おめでとうございます。」

は、よく見たら袴乙矢……!新年にイイモノ拝んだ……


「知り合い?」


「ああ、父さんの知人。」

知人かよっ……。




 てか、乙矢、
その抱えている子は……?!


「宗方です。……可愛いお子さんですね。」

まさか、二人の間に生まれた愛の奇跡……?!
夜な夜な饗宴を繰り広げていた努力の賜物?!


「……三葉です。」

可愛いな、オイ。目許なんて奥さんクリソツだし!

わざわざ本妻と子供を見せ付けられたし、まさか、俺の愛が試されている……!


「写真撮らせて貰っていいですか?“趣味”で。」

畜生。
堪える堪えるぜ
子持ちの新妻に嫌がらせ出来る程の悪女になれるかよ!
仕方ないから袴乙矢をカメラに納めて寂しい独り寝のオカズにしてやる!


「じゃあ三人で撮りますよー?一足す一はー?」

鳥居をバックに撮影してやる。
なんだよこのお似合い夫婦は……!



「ぱぱー、ままが呼んでる」
るりっちだ。


「かーわいっしょ?るりっちだよー。」

そうだよ、俺にはるりっちがいたんだ。
乙矢どうだ、隠し子っぽいだろ。
俺だってやることやっていたってカンジするだろう?


「わー可愛い娘さんですね」

二郎君が褒めたくなるくらいに俺ってば父親らしいんだ……


「本当に可愛い“娘さん”で。」

……うわ、何だよその乙矢の余裕な顔は。
若作りしても年相応にパパらしく見えちゃったショックを助長する物言いだ。


「そちらの可愛さには負けてしまいますけどね〜、るりっちキレー系統だからマ・マ・に・似・て?」

負けねぇよ……。
そっちのママも確かに綺麗だけどうちのママは最凶なんだぞ?


「確かに、瑠璃ちゃんは美人さんになるね。瑠璃ちゃんのパパも若い方が良いんじゃないかな?」

乙矢は瑠璃ちゃんを誘惑するし若さを押してくるな。


「うー、どうする?」

迷うなるりっち!
夫婦を演じた仲だろう!

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