《MUMEI》

「傷はもう大丈夫なんですか?」


しばらく、そうしていると、ふと疑問に思ったことが口をついて出た。


グレイドは顔を俺の方へ向けると、視線だけを自分の羽根に向ける。


「ああ、もう治った。」

その言葉に肩越しから後ろを見上げると、昨夜まではあった痛々しい傷が跡形も無く消え去っていた。


「早っ!!!」


「人間と一緒にするな。」


「いや、でも…」


「あれくらい直ぐ治る。」


あれくらいって…結構血流してたんだけど……。



すると突然、グレイドが急降下していった。


「!???」


あまりにも突然過ぎて言葉にもならない。


「あの、何処に行くんですか?」


やっとの思いで、それだけを言うと、


「お前ん家。」


案の定、予想外な返事が帰って来た。


「じゃあ、どうしてわざわざあんなに上空まで行く必要があったんですか?」


「見納め。」


え?


またもや予想外な発言をされて、俺の頭は混乱するだけだった。

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