《MUMEI》
氷室 千守と内緒
「珠緒ー!どうしたのこんな所で。」

千守さんだ……


「あ……」

やばい。


「お腹痛いの?」

しゃがみ込んでいる僕を心配して下さった。


「そ、そういうのじゃなくてー……」

今、保健室には千秋様が居るんだ、千守さんと一緒に入ったりなんかしたら……こ、怖い……
しゃがみ込んで小さく纏まっていた体が更に縮み上がる。


「千秋兄さんに何か言われたでしょう?」

千守さんの声は全く千秋さんとは別物なんだけれど、話し方や仕草は流石兄弟、そっくりだ。
千秋様は彼のようにふんわり笑ったりしないけど……


「少し疲れて休んでたんです……」

一応、体育は中距離の授業中だし
う、嘘じゃないぞ。


「中距離か。千秋兄さんは元気だな……、あの人毒飲んでたのにね?」


「どく……」



「そうか父の誕生日には行ってないものね。知らないのかあ〜。
その時、千秋兄さんが差し出した奴隷が服毒しちゃったから兄さんが接吻して解毒剤を飲ませてね、兄さんには珍しいくらいの執心ぶりなんだよー。」

つい、
口に出してしまいそうになった。

だってセ、セップン……なんて卑猥な響きだものっ、

伸びちゃうよー……!

屋敷での千秋様のセ、セップン……思い出し生えしちゃうよう。





――――――――いや、実は生えている。

僕が屈んだのは千秋様が中距離中に倒れたのを保健室まで螢さんと運んで

グラウンドに出ようと外に出たら保健室の窓が開き




『 すまない…… 』


だなんて、千秋様がおっしゃるので

腹の毛が、
伸びた

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