《MUMEI》 ゴオオオォォォーーー… 激しく吹く風に逆らいながら、真っ直ぐに急降下していく俺たち。 その速さと来たら、遊園地で見掛ける大きなジェットコースターよりも速く……いや、新幹線よりも速いかな? 恐ろしいなんてもんじゃ無い。 体が空気の抵抗に耐えられず、壊れてしまうのではないかと思う程だった。 そのスピードで、グレイドは俺を抱えたままある一つの窓をくぐった。 さっきまでは怖くて目も開けられなかったが、突然止まったのと、静かになったのとで、恐る恐る目を開ける。 すると、見慣れた光景が飛び込んで来た。 そこは、俺の部屋だった。 ついさっきの、“お前ん家”と言ったグレイドの言葉に、実は違うんじゃないのか、と密かに期待を寄せていたのだが、あっさりと裏切られてしまった。 「これ、何処で見つけた?」 「?」 少しがっかりと肩を下ろしている俺に、グレイドが奇妙な形をしたブレスレットを突き出して来た。 あ、それは……。 「おじいちゃんの形見……。」 その言葉に、グレイドの瞳が怪しく光ったような気がした。 前へ |次へ |
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