《MUMEI》

「“おじいちゃんの形見”?」


グレイドは、初めて出会った時と全く同じ、怒りに満ちた表情をしている。


「……?」


俺は何が何なのか分からなかった。


グレイドは何かを考えるように、ブレスレットを見つめたまま、黙り込んでいる。


「それに何かあるんですか?」


突然俺達を襲った沈黙に耐えられず、突拍子な質問をしてしまった。


「……。」


尚も黙り続けるグレイド。


「……。」


俺も、神妙な面持ちのグレイドを前に、それ以上言葉を発することが出来なかった。



「…本物か……?」


突然独り言のように呟いたグレイドは、手にしていたブレスレットを高く掲げた。


そのブレスレットは、全身が銀色に覆われていて、隙間無く、鮮やかに輝く石が所狭しと並んでいた。


中央と思われる部分には、龍をかたどった小さな像が乗っかっている。


その龍の目は、グレイドと同じ、赤い瞳をしていた。


旗から見れば、そのブレスレットは最近流行の人気商品として売られていそうだ。


俺も、おじいちゃんからそのブレスレットをもらった時はそのカッコ良さに見惚れて、いつも肌身放さず持ち歩いていたくらいだ。


しかし、いつからか、最近ではそのブレスレットをつけないようになっていた。


そのブレスレットの放つ、銀色の怪しい光りにいつしか恐怖を覚えたからかも知れない。


しかし、グレイドの手によって掲げられたブレスレットは、別人のように窓から差し込む太陽の光りを浴びて、生き生きと輝いているように見えた。

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