《MUMEI》 俺は、ズンズンと怒りを抑えながら、鏡へ向かって行った。 案の定、そいつも俺の方へ向かっていた。 「誰なんですかっ!!」 そう言い放ったその時…… ゴンッ!!! 「った!!」 俺の額が鏡にぶつかった。 「え?…どうして…。」 鏡には知らない人が映っているの筈なのに……。 まさか…後ろ? …だが、振り向いてもグレイドが立っているだけ。 「…お前だよ。」 すると、今まで黙っていたグレイドが微かにそう言った。 「え…?」 「だから、鏡に映っているのはお前だよ。」 「……俺?」 慌てて目の前の鏡をもう一度見ると……。 その顔は確かに俺に似ていた。 ただ瞳は、グレイドと同じ、透き通るような赤だ。 「…それが本当の姿だ。」 再び振り返ると、グレイドの瞳は、何処か自信に溢れていた。 前へ |次へ |
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