《MUMEI》

『渉、おはよう!!』


『…おはよ。』


次の日の朝、渉はまだ不機嫌そうだった…。


『…璃久。あのさ〜
もうすぐ夏休みじゃん。
このまま、オレん家でバイトすんの?』


『もちろん!…何で?』


『…いやっ。
他にいいバイト探すのかと思ってさ…。』


『あ〜そっか。
探した方がいいかもね。
掛け持ちした方が、お金すぐ貯まるし…。
渉は?夏休みの予定!』


『…別に無いな。』


『え〜つまんないな。
彼女でも作って遊べばいいのに〜!!』


『…俺そういうのパス。』


『ふ〜ん。』


昨日、稜兄が言ってた“渉への疑惑”の意味が何となく分かった気がした…。


『渉はさ〜、今好きな子とかいないの?』


『…何だよ急に?』


『いや〜。
渉とそういう話したことないなぁ〜と思って。』


渉の答えが気になって、
しばらく沈黙が続いた。


『あっち〜な…。』


渉は、何もなかったかのように、はぐらかす。


その姿があまりに不自然だったため、私も思わず笑ってしまった。


2週間後に待っている“夏休み”に何かが起きるような気がしたのは、私の考えすぎだろうか…。


『璃久〜お帰り!!
ん?あ〜渉もいたのか?』


稜兄は“渉疑惑”追求の為、白々しく言った。


帰るなり私に抱きついた稜兄は耳元で囁く。


『璃久!ほっぺにチューして。早く!渉がこっち見てるうちに!』


“え〜”
心の中では思ったけど、渉の反応も気になる…。


“え〜い。やっちゃえ!”


ちゅっ…


急いで渉の顔をチェック!


って見てないよ…。


渉はさっさと
二階の自分の部屋へと行ってしまった…。


『ん〜イマイチだな。』


稜兄は、つまらなそうに
頭をかく。


この微妙な空気が
いつまで続くのか…。

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