《MUMEI》

「そんなので驚く必要ないだろ。」


「いや、だって!!」


背中には、グレイドと同じ翼が、綺麗に折り畳まれていた。


「今さっきまで無かったのに…!!」


「いや、あった。」


「え?」


「いまさっきは真正面からしか見て無かったろ?」


あ、そうか。


今は、鏡に対して横に立っているから……。


だから気がつかなかったんだ。


ゆっくりと意識して、羽根を伸ばすと、


「うわぁ…」


コウモリのような翼と言えど、その綺麗な姿に思わず見とれてしまった。


グレイドとは少し違うけど…これも個性かな?


そう思っていると、


「お前…その羽根!!」


何かに驚いたグレイドが、俺の側に寄ってきた。


「…どうか…したんですか?」


しかし、その返事は返って来ない。


俺の羽根をまじまじと見ている。


まあ、確かに変だよな。


俺の羽根には、コウモリの翼ならあるべき鍵爪のような箇所に、鋭い牙が付いている。


グレイドのは…その箇所には何も無かったが、翼の先が鋭く尖っている。

凄いな…改めて関心していると、


「おい、早く着替えろ。」


グレイドが少し焦りながら暗闇の方に向かって行く。


「あ、はい!…あ、でも翼が……。」


服着れないんじゃ無いかな……?


「大丈夫だ。早くしろ。」


「…はぃ。」


渋々着替えると、不思議と背中に違和感がなかった。


「す、凄い…。」


何処にも穴なんて無い筈なのに、ちゃんと服越しの背中から翼が出ていたのだ。

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