《MUMEI》
祐也の母親
固まったまま祐也を見つめていると、祐也は出した右手を引っ込めて、旦那様の後ろに隠れた。


よほど、俺の顔が怖かったらしい。


「忍。お前、資料を読んでいないのか?」


(あ…)


呆れたように言う父の言葉に、俺は開封していない資料の存在を思い出した。


「ここはいいから、読んできなさい」


震える祐也の頭を撫でながら、旦那様が告げた。


「すみません。失礼します」


俺は、来た道を戻り、部屋に置いてあるカバンから、ある資料を取り出した。


それは、祐也の両親に関する物だった。


生まれたばかりの赤ん坊を捨てるような母親や、その父親に俺は全く興味が無かったのだ。


(あの顔…でも…)


あの方が、そんな事をするとは信じられ無かった。


しかし、祐也の顔はあまりにもあの方に似すぎていた。


俺は、緊張しながら、祐也が生まれた部屋の監視カメラが写した女の顔を確認した。


(…どうして……?)


そこに写っていたのは


ひどく生気の無い顔をした姫華様だった。


(一体、何があったんだ?)


俺は、更に同封された書類を読み始めた。

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