《MUMEI》
敵わない
『ブルーについては、現在も調査中』


そんな文章で、書類は終わっていた。


(祐也が、姫華様の、息子…)


いつかの、幼い日見た旦那様と姫華様のやりとりを、俺は思い出していた。


孤独な旦那様に、姫華様は自分の子供をあげようかと言った。


それが、本人達にとっても思いがけない形で実現したのだ。


(敵わない)


何となく、確信していた。


あの、姫華様の子供が、旦那様を傷付けたり、拒んだりするわけはないと。


俺と祐也が出会って二年後。


九歳の祐也は、当然のように旦那様を受け入れた。


旦那様は、それより前に祐也を抱きたかったが、八歳の時、俺が旦那様を拒んだのがトラウマになっていたのか、その時まで祐也に手を出していなかった。


「祐也、…祐也ッ…愛してるよ、可愛い祐也」

「ウ…ンッ…俺…も。だから、大丈夫…ッ」


初めての行為がどれ程辛いものか、俺は身を持って知っていた。


小さな体でそれに耐え、旦那様を受け入れる祐也と、愛する者に受け入れられ、歓喜する旦那様。


そんな声と音を扉越しに聞きながら、俺の体は熱くなっていた。


それが『どちら』に反応しているかはわからなかった。

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