《MUMEI》
研究所
アルフレッドが所長を務める研究所の資金を提供していたのは、元々はアメリカの企業だった。


しかし、不景気で、企業自体が縮小したため、研究所資金も少なくなっていた。

その企業にかわり、春日グループが研究所を買収する事に、多くの研究員達は賛成だった。


旦那様が提示した金額は、以前よりも多かったからだ。


なのに


「申し訳ありません。お断りします」


研究所の所長であり、最も功績を上げているアルフレッドが首を横に振り続けていた。


だから、旦那様がこうして直接説得に来たのだった。


「日本語、お上手ですね」

「あ…以前、…昔、留学していまして…」


旦那様の目の前の男


アルフレッドは、照れ笑いを浮かべた。


(この男が…本当に?)


その瞳の色は、確かに祐也にそっくりだった。


しかし、アルフレッドは見るからに誠実そうな人間であり、研究所からも信頼されていた。


旦那様の申し出を断ったのも、昔から付き合いのある企業の元で働きたいからという理由だった。


それに、彼には愛する妻と可愛い子供が三人もいた。

一番上の子供は、祐也より一つ年上で、やはり、青い瞳の男の子だった。

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