《MUMEI》
馬鹿なアルフレッド
「…子供?」


確認する旦那様に、アルフレッドは力無く頷いた。


「彼女が…避妊具に穴を開けていたなんて、知らなかったんです…

それでも、自分の子供なんて信じられ無くて、DNA検査もしたんですが、やっぱり…そうで

『この子も私も、あなた無しでは生きていけない』

そう、迫られて…」


確かに、あの小柄で大人しい妻なら、言いそうなセリフだとは思った。


(それにしても、恐ろしいな…)


彼女は、留学前に別れを切り出したアルフレッドに、『最後に一回だけ』と迫り、その一回で妊娠していたのだった。


そんな女なら、一人でも逞しく生きていけそうだと思ったが、残念ながらアルフレッドは女の情に流されたようだ。


「言ってしまったんです。全てを話して謝った後に、『姫華は、強いし綺麗だし、一人でも大丈夫だよね』って…」

「馬鹿な事を」


(本当に、馬鹿だ)


姫華様のお腹の中には、既にアルフレッドとの子供が

祐也がいたのに。


そして、その事を姫華様はアルフレッドに告げる事なく死を選んだのだ。


祐也を道連れにせず、あの場で、ナイフの上に祐也を置いたのは


祐也の運と生命力を、信じたからだった。

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