《MUMEI》
志貴の努力
(まぁ、父親が、あの龍平さんだしなあ)


龍平さんは、志貴同様、服の上からでもサイズをピタリと言い当てる特殊能力者だった。


「それに、祐也より重いし」


(祐が喋ったんだな)


俺は今年も一人だけ別に身体測定を受けた。


身長と体重を測ったのは、今年も保健委員になった祐だった。


(身長同じだしなぁー)


志貴の身長は去年と変わらなかったが、俺の身長が伸びたから、今は俺と志貴は同じ身長になっていた。


「私の話はもういいから、さっきの説明してよ」

「私も聞きたいなぁー」


同じテーブルに、部長がやってきた。


(今なら大丈夫かな?)


チラッと見ると、厳はまだ坂井さんをからかっていた。


それでも、俺は一応小声で説明した。


「それは厳君も悪いけど、その子も…
控えめなのは悪くないけど…私、そういう子苦手かも」

「私も。気に入らない」


(あれ?)


てっきり、厳の悪口が出ると思っていた俺は意外だった。


「祐也、明日その子、父さんの店に連れてきて」

「え? 何で?」

「ちょっと、気合い入れてあげようと思って。

お願いね」


そして志貴は、アイスコーヒーを一気に飲み干した。

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