《MUMEI》
夕立
雨が降る。

正平は迷っていた。
傘を忘れてしまったのだ。昌との約束もあるが、もう少しだけ学校に居たい。

とりあえず、掃除を終えて、学校で雨が止むのを待ってから山に行こうと、
箒を片手に雨雲を見ながら考えていた。





昌は正平が来るのが待てなかった。
どうにもならない虚無感、忘れたいことがある。

背筋が寒くなる、ここに一人だと実感することが嫌で嫌で堪らない。
一人などと考えることは無駄だと知っているからだ。
「みんな、同じなのにね?」
雨が降り出した。
昌は落ち葉を手にいっぱいに掬い上げ頭上に舞い上げた。


雨が

落ち葉が

降る 降る 降り注ぐ

両手を目一杯拡げて仰向けに崩れていった。

昌は深く深く沈んで行く。笑いたくなる衝動を抑え、地面に抱き留められる錯覚が木霊達に思わず言いたくなる言葉を零す。

   「ただいま」

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