《MUMEI》
ルール説明
「では、ルール説明に移ります。
 まず行動範囲は、この市内に限ります。市外との境界線には警備隊が限界体制で警戒しております。
 無理に逃亡しようとした者には命の保証はできませんのでそのつもりでお願いします。
 なお、移動は徒歩に限定。乗り物に乗っているところを発見した場合、逃亡の意思ありと見なし、警備隊より攻撃させていただきます。
 プロジェクト期間は四日間。
 その間に、こちらが設けた目標を達成した方をプロジェクト成功者とし、天皇様より様々な賞品、特権が与えられます。
 一通りの説明は以上です。
誰か質問がある方はどうぞ」
 校庭は何百人も集まっているとは思えないほど静かだ。
 実川は一人頷くと、近くに控えていた実行委員と思しき男たちに合図を送った。
「では、これから鬼と子を分けるクジをひいてもらいます。それぞれ列に分かれて順次引いていって下さい」
実川の言葉に、人々はノロノロと動き始めた。
「鬼と子?去年とは違うな」
 去年のイベントは二人一組タッグを組み、ゴール地点まで競争するというものだった。
「なんでこんなことに」
 誰かの悲観的な呟きが聞こえる。
ユウゴは流れにのって列に並んだ。

 しばらくして、列の前から、微妙な表情をした人が手に紙を持って戻っていくのが見えた。
 徐々に列は短くなり、いよいよユウゴの番だ。
 差し出された四角い箱には手を入れる穴が丸く開いている。
典型的なクジのスタイルである。
 ユウゴは手探りで一枚の紙を選ぶと引き出した。
「なんだこれ?」
 開いた紙には何も書かれていない。
「なんも書いてないッスけど?」
 ユウゴは白紙を係りの男にピラピラと見せた。
「ええ、あなたは子ですね」
にこやかに男は答える。そして「後ろでもうしばらくお待ちください」と促した。

 後ろへ回り、他の人が持つクジをこっそり覗き見てみる。
 ユウゴと同じように白紙の紙がほとんどだが、中には真ん中に小さく数字が書かれている紙もある。
「なんだってんだ?」
 疑問に思いながら、ユウゴは次の指示が出されるのを待った。
「えー、全員クジを引き終わったようです。
みなさん、自分が引いた紙を見てください」
 再び、実川が台に上がった。
「紙に何も書かれていない人は子、そして数字が書かれてあった人は鬼です。
鬼のみなさんはその紙に書かれてあるだけの人数を捕まえなければなりません」
校庭がざわつく。
中にはすでに「無理だ」と嘆いている人もいる。
 おそらく書かれてある数字は人によって違うのだろう。
「子は時間いっぱいまで逃げ切ることが成功条件。
 鬼は時間内にその書かれた人数の子を捕まえることが成功条件。
 子も鬼も死ぬ気で頑張ってください。
もちろん反撃もOKです。
鬼を倒した分だけ子にとっては有利ですからね。それから……」
 実川は校庭を見回して、うっすら笑みを浮かべた。

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