《MUMEI》

キーンコーンカーンコーンッッ♪


『やったぁ〜!!
明日から夏休みだ〜!!』


教室のあちらこちらから
そんな声が聞こえてきた。


“夏休みかぁ〜↓”


なんて、
私がボーっと考え込んでいると…


『璃久っ!!』


大声で驚いて振り向いた私は、声の主を見てさらに驚いた!!


『…渉?…どうしたの?』


渉が私の教室にいるなんて考えられなかった…。


また、変な噂を流されたらどうしようとオドオドしていると、息を切らした渉が私の腕を掴んだ。


『何っ!?』


『いいから来いっ!』


『…何で?』


『いいから(怒)!
稜兄が事故に遭った…。』

『…事故?…稜兄?』


頭が真っ白になった私は、ただ渉に手を掴まれ、
走っていた…。


急いでタクシーに乗り込み、渉から事情を聞く…。


渉の話では、
横断歩道を歩いていた稜兄が大型バイクに跳ねられ、今、意識不明だということだった…。


“うそ…”


信じられなかった…。


病院に着くまでのタクシーの中、私の不安は膨らむ一方だった…。


ICUに入って…

沢山の機械が
体に装着されてて…

稜兄は別人のように
眠っている…


そんなことを考えていると怖くて震えが止まらなかった…。


そんな私に気付いてか
渉はタクシーの中でも
私の手を離そうとはしなかった…。


ただ黙って
景色を眺めている
渉は力強く、私の手をずっと握っていた…。


このまま…


向かう所が
稜兄の病院だなんて…


私は渉に手を引かれたまま稜兄の病室まで来た…。


渉は力一杯、私の手を握ったまま、静かに病室の扉を開く…。


私はぎゅっと目を瞑った。


全神経を耳に集中させ、
私は、息をのむ…。

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