《MUMEI》
制裁(58〜61)
「忍」

「はい」

「君は、祐也がされた事を彼にもできる?」

「…それが、旦那様の御命令なら」


俺達の会話を聞いて、目の前でうずくまる男は悲鳴を上げた。


旦那様は俺と男を交互に見ながら、冷たく微笑んだ。


「あんな人間、忍が犯す価値は無いよ。

そのままで、この状態で、顔に三発・肋骨二本…だったかな?」


それは、祐也が負った外傷だった。


ちなみに、この状態とは、手袋をはめた状態を指していた。


(素手で殴る価値も無いって事か)


旦那様の意図を察した俺は、男に歩み寄ると、襟を引っ張り、無理矢理立たせた。


「じゃあ、そっちは任せたよ。私はこれから来る連中を引き受けるから」


バキッ!


「ぐわッ!」


俺は返事のかわりに男の顔を一発殴った。


「あと二発。それから、肋骨が残ってますからね」


一応、相手に敬語を使う。

「ヒ、ヒィ! や、やめ…」


バタンッ!


「弘也(ひろや)!」


ヒステリックな叫び声を上げながら飛び込んできたのは


奥様と、一人の使用人だった。


そして、俺が二発目を入れた男は、祐也に暴行を加えた『旦那様の御子息』だった。

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