《MUMEI》

「なんか…想像していたのと違うな……。」


「この世界か?」


薄暗い通路を永遠と歩きながらポツリと呟いた。

自分にしか聞こえないように呟いたのに、グレイドには聞こえたようだ。

「はい…。」


「アレだろ?
血海地獄とか、針地獄とか、剛火地獄とか……。」


「はい…。」


図星だ。


「まあ、あるのはあるんだけどな。」


「!?」


不思議そうに見上げる俺の頭を、グレイドはガシガシと掻き回した。


「ま、いずれ分かる。」


そう言うと、いきなり真剣な表情に変わった。


視線の先には、鉄でできた、とても頑丈そうな扉が立ちはだかっていたのだ。


「この中に…入るんですか……?」


「ああ…。」


いつに無く慎重なグレイドの顔に緊張してしまう。


「よし。」


その声と共に、グレイドは軽く扉をノックすると、静かに開いた。


「失礼します。」


そうして、俺達は静かに中に入る。


中は霊界と同じぐらい暗闇に包まれていて、幾ら目を凝らしても全く先が見えなかった。


けれど、身体に光をまとったシルエットを見た途端に、思考回路を止めた。


その正体はーーー……

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