《MUMEI》
稽古
『俺を鍛えてくれ』


そう、祐也に言われた時は戸惑った。


(この顔がよくないな)


姫華様と同じ顔が、俺を真っ直ぐに見つめる上に、俺に頼み事をするなんて


正直、断りづらかった。


それに、アルフレッドと確かに同じ色のはずなのに、祐也の瞳の青は


旦那様にどれだけ抱かれても


弘也にあんな目にあわされても


どこまでも青く、美しかった。


(何を考えてるんだ、俺は)

祐也は俺から旦那様の心を奪った張本人なのに


(俺の心も奪うつもりか? こいつは)


そう思うほど、無意識に祐也を見つめている自分がいた。


俺は、想いを振り払うように、祐也を容赦なく鍛えた。


(そんなに嬉しそうに笑うな)


厳しくしているのに、笑う祐也を見るとイライラして、かなり本気を出して相手をしているのに


祐也には、力は無いが


姫華様譲りのどこか華麗な素早さと、跳躍力があった。


まるで


あの日の姫華様の


…天使のような


(違う! こいつはそんなんじゃない!)


俺は慌てて自分の考えを否定した。


そして、その日の夜も、祐也と旦那様の情事を『執事として』見守った。

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