《MUMEI》
旦那様の想い
(コワイ)


旦那様を、こんなに恐いと思ったのは


旦那様に襲われたあの日以来かもしれない。


…あの日との違いは、旦那様が俺に敵意を持っている事だ。


「本当は、祐也は姫華の望んだような普通の生活を送らせた方がきっと幸せだった」


あの容姿と頭脳は、普通の中では目立ち過ぎるだろうと思ったが、俺は旦那様の言葉を静かに聞いていた。

「でも、私には、あの子が、祐也の愛情が必要なんだ。

あの子を失ったら…生きていけない」

「それは、今の祐也ですか?」


俺の質問に、旦那様の目から鋭さが消えた。


そのかわりに、俺の恐怖が旦那様に移ったかのように、旦那様は脅え始めた。


(無理無いか)


祐也は、未だに体毛も生えていないし、声も変わっていない。


しかし、普通なら、いつその日が来てもおかしくない年齢になってきていた。


もし、旦那様が祐也を抱けなくなったら、旦那様はどうなるのか。


そして、その時、祐也はどうするのか。


それは、俺がずっと疑問に思っていた事であり、旦那様が恐れていた事だった。

そして、その日が


ついに、来てしまった。

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