《MUMEI》
◇桜、舞う春
 晴晴れとした空模様。
校舎横に少し遅れて咲いた桜が空の色に映え渡っている。
何もかもが綺麗すぎて、私の場所だけが孤立して感じた。ここだけが違う場所のように…………




 春の涼やかな風が、明るく染めたばかりの髪をなびかせる。風に乗った桜が髪に絡み付き、飾りのようにその艶やかな髪を引き立たせていた。
女はソレを気にするでもなく耳につけられたイヤホンから音楽を感じ、またその身体で外の世界を感じていた。
そして、舐めていた飴の棒を窓から外へ投げ捨てるとため息をついた。




―――――8時15分。



 8時を過ぎた頃から徐々に人が増えてきて賑わいをみせている。運動部のかけ声や挨拶する声が聞こえるとソレも次々にかき消えていき、居なくなった。




「そろそろ時間かなぁ----」



女は白い壁にかけられた時計を見た。HRの時間まであと10分だ。視線を時計から周りに配らせると、科学記号や薬品名の書かれたポスターが貼られていた。それ以外はとても殺風景な教室――ここは理科室だった。教室のある校舎とは離れた第二校舎にあるここは、必要以上に誰も近寄らない。人の気配もない、校内が見渡せる場所で女にとっては"お気に入り"の場所だっ

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