《MUMEI》 自殺の理由『旦那様の死は、病死とする』 俺の意見に逆らう者はいなかった。 「な、なぁ…忍」 「何でしょう、弘也様」 旦那様の葬儀で忙しい俺に、弘也が恐る恐る近付いてきた。 「あの、あのさ〜」 「簡潔にお願いします」 「あいつはどうなるの?」 『あいつ』 弘也が言っているのは、祐也の事だった。 その目は、獲物を狙うハイエナのようだった。 (…クズだな) いくら血が繋がってないとはいえ、仮にも父親が亡くなったというのに 悲しみもせず、祐也を欲しがる弘也を俺は睨みつけた。 「御心配無く。旦那様の遺言通りに致しますから」 俺の言葉に、弘也は肩を落として席に戻った。 旦那様の遺言。 それは、祐也に普通に生きて欲しいというものだった。 ここを、春日の屋敷を出て 特殊な環境から、普通の社会へ 学校に行き、友達を作り 結婚…は無理だとしても、就職して そうして、毎日を重ねていく。 そんな 亡くなった祐也の母親の姫華様が誰よりも望んだ生活を、祐也に その為に、邪魔になる自分という存在を、旦那様は自分で消したのだ。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |