《MUMEI》
自殺の理由
『旦那様の死は、病死とする』


俺の意見に逆らう者はいなかった。


「な、なぁ…忍」

「何でしょう、弘也様」


旦那様の葬儀で忙しい俺に、弘也が恐る恐る近付いてきた。


「あの、あのさ〜」

「簡潔にお願いします」

「あいつはどうなるの?」

『あいつ』


弘也が言っているのは、祐也の事だった。


その目は、獲物を狙うハイエナのようだった。


(…クズだな)


いくら血が繋がってないとはいえ、仮にも父親が亡くなったというのに


悲しみもせず、祐也を欲しがる弘也を俺は睨みつけた。


「御心配無く。旦那様の遺言通りに致しますから」


俺の言葉に、弘也は肩を落として席に戻った。


旦那様の遺言。


それは、祐也に普通に生きて欲しいというものだった。


ここを、春日の屋敷を出て

特殊な環境から、普通の社会へ


学校に行き、友達を作り


結婚…は無理だとしても、就職して


そうして、毎日を重ねていく。


そんな


亡くなった祐也の母親の姫華様が誰よりも望んだ生活を、祐也に


その為に、邪魔になる自分という存在を、旦那様は自分で消したのだ。

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