《MUMEI》
夢か現か(71〜75)
(やっぱり、…だめなのか、俺じゃ)


(俺はいつでも誰も救えないのか)


旦那様の死を知ってから


俺の話を聞いてから、祐也は何も食べなくなった。


倒れて発熱しても、薬を拒むから、濡らしたタオルを当てるしかないのだが


それも、意識が無い時だけで


意識が戻れば、俺の手を払いのける。


(明日、主治医を呼ぶか)


もう、付け焼き刃の知識の俺の看病では、限界が来ていた。


俺以外の屋敷の人間は、祐也に接する事は禁止されていたが…


(死んだら、どうしようもないしな)


俺は、祐也の額からタオルを外した。


(少しは下がったか?)


祐也の額をそっと撫でてみる


ガシッ!


「也、…祐?」


祐也が、俺の手を掴んだ。

「…祐也?」


(おかしい)


熱で朦朧としているのか、祐也の目は虚ろだった。


それに


さっき、祐也は『也祐』と。


俺に向かって旦那様の名前を呼んだのだ。


(…まさか、壊れたのか?)


俺は、無意識に震えていた。


「本当にもう、俺を…嫌いになったのか?
もう、抱いてくれないのか?」


「ゆ…や、待っ…ンッ!」

俺の言葉は祐也の唇によって塞がれた。

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