《MUMEI》

…そうだった。


確か蓮翔ちゃんは昔から“整理する”ことが嫌いだったな。


俺は皆も恐れる程の潔癖症。


たぶん蓮翔ちゃんの部屋に入ったら……。


いや、入れないな。


「仕方ねぇなあ…掃除手伝ってやるよ。」


「や、いい!!」


「何で即答で断るんだよ!!!」


「だって、たぶん颯ちゃん倒れるぜ?」


「汚な過ぎて?」


「おう!」


何故か自慢気に話す蓮翔ちゃん。


どんだけ汚ねぇんだよ…。


仕方ない。


蓮翔ちゃん家に泊まるのは諦めることにした。


「分かった。
潔く怒られるわ…。」


「すまん!」


その時……。


「よおっ!
ひっさしぶりぃ〜!!」

後ろから馬鹿でかい声が聞こえた。


誰だ!?


何も言わない俺達に、


「覚えとらん?
まあ、声変わりもしたけんなあ!
分かりづらいよなあ!」

田舎臭い雰囲気を漂わせながら、ズカズカと近寄ってくる。


「わざわざ田舎からの追っかけ?」


蓮翔ちゃんが不機嫌そうに耳打ちをした。


「ん。そうかも。」


俺はニヤリと頷いた。


「よし、じゃあ…。」


蓮翔ちゃんのその声と共に、俺達は逃げ出した!!


だが、俺は知っていた。

そいつが誰なのかを…。

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