《MUMEI》

袖は少し湿っていた。


「泣いていたんだろ?袖が濡れているぞ。」


「泣いてなんかいない、さっき手を洗った時に濡らしたんだ…。」


綺嘉は塁羅の手首を離し、そのまま塁羅を抱きしめた。


「ごめんな、俺が泣かしちゃったのかな?」


「ち、違う。」


「じゃあなんで、泣いていたんだ?」


「少し昔を思い出しただけだ。」

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