《MUMEI》
松本のクセ
翌日。


「お待たせ、早いね」

「すみません。つい、クセで…」


(別に謝らなくても…)


俺と松本は、龍平さんの店の近くの大型書店の前で待ち合わせをしていた。


「何か買ったの?」

「すみません、小説を一冊」

「今日の服装、可愛いね」

「すみません、気合い入れすぎました?」

「いや、大丈夫だと思うけど…

じゃ、行こうか」

「は、はい」


(『すみません』て、口癖なのかな?)


俺は首を傾げながら、松本と一緒に目的地に向かった。


「こんにちは」

「……」


「いらっしゃいませ」×3

店内には、龍平さんも含めて三人のスタッフがいた。

「あ、祐也君だ」


手が空いていたスタッフが近付いてきた。


「お久しぶりです」

「久しぶり〜、どうしたの?今日は? …デート?」

「ちちちがいます!私なんかと田中先輩がデートだなんてとんでもないですっ!」


(びっくりした)


松本の大声を初めて聞いた俺は、かなり驚いていた。

「…そういうのが、嫌いなのよね」

「志貴?」


スタッフルームから眉間にしわを寄せた志貴が現れた。


「…すみません」


謝る松本に、志貴は近付いていった。

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