《MUMEI》
松本のセンス
「ふ〜ん…」


志貴は、至近距離で松本の姿を見つめた。


「すみません、すみません…」

「何で謝るの?」


志貴の質問に、松本がビクッと震えた。


「お店で騒いじゃったし、…それに」

「『それに』?」

「わ、私なんかが田中先輩の、か、彼女と間違われてしまって

つ、つつ津田さんの方がお似合いなのに…

なのに、すみません!」


松本は、これでもかっていうくらい、深々と頭を下げた。


志貴は、無言でため息をついた。


「碧(みどり)ちゃん、どう思う? この子?」

「へ?」


碧ちゃんというのは、俺達に話しかけてきた一番年下のスタッフだ。


童顔で、志貴より年下に見える碧さんは、志貴の言葉に首を傾げたが、すぐに意味を理解して、答えた。


「可愛いし、センスあるよ? 自分に似合う色わかってるし」


その言葉に、松本が真っ赤になった。


(確かに)


俺が松本を『可愛い』と言ったのも、決してお世辞じゃなかった。


メイクも服装も


ちゃんと、松本に似合っていた。


「言っとくけど、ここのスタッフは下手なお世辞は言わないからね」


志貴の一言に、松本は開きかけた口を閉じた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫