《MUMEI》
「……うん、久しぶり、……元気だよ、仁は?……そう」
俺はテレビのボリュームを下げ、ソファにボスッと座る。
じっと惇を見ていたら話ながら惇は俺の隣に来た。
社交事例の様な世間話から入り今は最近の仕事の状況を説明している。
しかしそれは久しぶりに高校時代の先輩から連絡あったみたいな内容で、どことなく違和感っていうか…
なんだろう。
兄弟の会話じゃない。
俺も姉貴いるけど、結婚してるせいか会うのは本当にまれだけど、こんなによそよそしくないというか…。
惇は右手の中指にある小さなホクロを親指で擦りながらじっとそれを見ていたが、突然大きくため息を吐いたかと思えば、激しく瞬きをしたり、突然髪を触りだしたりが始まった。
会話はいたって普通なのに。
段々顔色が悪くなってきて、むきになって髪を指先で解かしだして。
「惇、誰と電話してるんだ?」
俺はしっかりした口調で電話に向かい、わざと言った。
一瞬惇はびっくりして俺を見た。
動きの止まった右手を掴み俺は惇を見ながらそこに唇をつけた。
すると惇は、
一瞬で破顔した。
一瞬で顔色が良くなった…。
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