《MUMEI》
第一章
祖父の話しを聞いた私は、ちょうど大学が長期休暇になる夏に車を走らせた。
長旅になるのを覚悟しながらだったが、必要最低限の少ない荷物で出掛けた。



車を走らせながら、祖父の言った言葉を思い出していく。不安が胸を締め付ける。首からさげられた水晶のネックレスを握りしめた。










「奏、お前ももう20歳になった。そろそろ真実を知ることも必要だろう。しかし、本当に真実を受けとめることがお前に出来るか―・・・?」



真っ直ぐに見る祖父の目は真剣そのものだった。少し怯みながら、私は祖父の目を見返す。握りしめた手に、より一層力が入った。



「――分かった。私の知るすべてを教えてあげよう、奏」



祖父は鍵のかけられた棚からお菓子の缶を持ってくると、その中から一枚の写真を取り出し奏に手渡した。写真に目を落としてみる。



それは、洋風な館の前で集合写真を撮ったものだった。3人の女性と4人の男性、2人の子供が写っている。
みんな笑顔で何かを手に持っていた。



「ねぇ、みんなが手に持ってるの何か分かる?」



祖父に指を差しながら写真を見せると、再び缶の中から写真を取り出す。
今度の写真には祭壇のようなものが写っており、マリアのような仏像が置かれていた。



「これはな、村の守り神になっている"雪園様"じゃ。これがわしの息子、忠幸じゃよ。お前を私に預けに来た――それからすぐに居なくなったがな」



淋しそうに写真を見る祖父を見ながら、もう一度2枚の写真を見る。そして、奏はあることに気付いてしまう。



「この写ってる真ん中の女の人、私に似てない?」



祖父は奏を見ると険しい顔をした。
その祖父の表情を見た奏は、確信した。この女の人が過去を知るカギになることを――――・・・・・



「わしの息子もきっとその村に居るはずじゃ。見付けておくれ」





そして私が家を出る直前に祖父はこう言った。



「奏、気をつけて行きなさい。あの村は危険なはずだ」



「分かった。じゃあね祖父さん」

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