《MUMEI》 『お前等遅いぞっ!!』 病室から聞こえてきた声に私は、耳を疑った…。 “稜兄の声…?” 恐る恐るを目を開くと 全身包帯グルグル巻きの きっと稜兄であろう人物が私たちに怒っていた…。 『お前等な〜 もっと早く来いよ! 俺、大変だったんだぞ。 あっ!渉! 何、璃久と手繋いでんだよ?離せ!離せっ!!』 稜兄のテンションに 一瞬イラッとした…。 それは 渉もだったのだろう…。 『…俺、 入院手続きしてくるわ。』 そう言い残すと、病室を出ていってしまった。 『…チッ! 何だよ、あの態度! もっと兄貴を労れよな。』 私も能天気な稜兄に さらに腹が立った…。 『あのね〜 私達がどんな思いで ここまで来たと思ってんの(怒)?…意識不明とか言っちゃって!! 全然元気じゃん(怒)!』 『…意識不明? ははっ(笑) 確かに脳しんとうとかで意識はなかったな俺。』 ………。 …稜兄の話では 事故の時、頭を打って 意識がなかったらしい。 もちろん命に別状はなく 俗に言う“気を失なった”ってやつらしい…。 …にしても。 元気そうに笑う 稜兄の姿は 事故の壮絶さを物語る程、痛々しいものだった…。 『…で。 本当に大丈夫なの?』 『あぁ?大丈夫だよ! ただ問題はコレだよな。』 そう言った稜兄は ギブスを着けた右腕を 見つめた…。 『あ〜ぁ〜。 足も折れちまってるし、手がコレじゃ不便で仕方ねぇわ。早く退院してぇな。』 『…そうだね。』 ―数週間後― 『璃久っ!頼むよ!』 …私は、何故か ケガ人の稜兄から頭を下げられている。 理由はこうだった…。 稜兄は数週間の入院生活にかなり嫌気がさしてきたらしい…。 だから渉には内緒で退院の手続きをしてきてほしいとのことだった…。 『ねぇ〜稜兄。 骨折れてるんだし、 完治するまで、おとなしくしてなよ。』 『無理っ!!』 『………。』 稜兄は一歩も引かず、 二時間の説得の甲斐無く 私は、退院の手続きをすることになってしまった。 “渉が知ったら 怒るんだろうな…。” そんな不安を抱えながら 車椅子を押し歩き、 坂城家へ到着…。 『…ただいま〜。』 前へ |次へ |
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