《MUMEI》
いきなり大ピンチ!
みゆきは気の進まない合コンに付き合わされていた。
友人の純と梓に頼み込まれて、嫌だけど断りきれなかった。
男3人、女3人。
男は皆医師だと言う。お世辞にもイケメンとは言えない。
話も退屈で今いち冴えない。
みゆきがつまらなそうにしているので、純が隣からエルボーをかます。
「みゆき、スマイル、スマイル」
面白くないのに笑うほど人間はできていない。
みゆきは早くも後悔していた。
みゆきと純と梓は、ネットカフェで働いていた。
皆23歳。合コンをやるくらいだから、三人とも特定の彼氏はいないが、よくモテた。
客の中にもファンは多い。無理して合コンなどする必要もないと、みゆきは反対したのだが、飲み会と違って、2対3では困るらしい。
みゆきが帰るタイミングを狙っていると、不破野という30歳の男が、自慢話を始めた。
「まあ、俺のテクにかかれば、女の子はみんなイチコロだからね」
みゆきはカチンと来たが、梓が乗る。
「嘘、演技じゃないの?」
「違うよ。俺に攻められて無事だった女の子はいないよ」
「ホントにい?」
「じゃあ梓チャン、お手合わせしようか?」
「やだー!」
はしゃぐ梓を睨むと、みゆきは言った。
「はしたないよ梓」
「はしたないとか言わないでよ」梓は笑っている。
「うまい人好きだなあ」
純も調子を合わせてビールを注ぐ。
「サンクス」
みゆきはイライラした。皆大人過ぎる。
そんな不満顔のみゆきに、不破野が話しかけてきた。
「みゆきチャンてさ、感度いいほうでしょ?」
「はあ?」
みゆきは呆れ顔で不破野を睨んだ。しかし不破野は怯まない。
「君なら3分あれば落とせるよ」
みゆきは込み上げる怒りを必死に抑えると、怖い顔で言い返した。
「あんたもかわいそうな男ね」
「やめなよみゆき」純が腕を掴んだ。
「俺はかわいそうじゃないよ。女には不自由しないし、プレイでは女の子をとことん喜ばせるし」
「最低!」
「何マジになってんの、みゆき」
梓までがみゆきを責める。イライラは頂点に達した。
「不愉快だから、もう帰る」
「逃げんのかよ?」
「はあ?」
みゆきは馴れ馴れしい不破野を睨みつけた。
「みゆきチャンは一度、本当のテクニシャンにいじめられるとひと皮剥けるよ」
これほどのセクハラが許されるはずがない。
「くだらない。帰るわ」
「みゆき!」
梓と純が呼び止めたが、みゆきは振り返ることなく店を出た。
みゆきが路地裏を抜けようとすると、不破野が追いかけてきた。
「みゆき」
全身に鳥肌が立つ。
「呼び捨てにしないでくれます?」
血走った目で睨むが、不破野はあつかましい。
「送ってくよ」
「あなたもしかして、バカ?」
みゆきの軽蔑の眼にも動じることなく、不破野は言った。
「みゆきチャンかわいいからさ、ナンパされたら困るから、駅まで護衛するよ」
「結構です!」
ピシャリと言った。すると、不破野は嘲笑した。
「みゆきチャン、そういう生意気な態度取っていいと思ってる?」
「脅すんですか。警察に言いますよ」
「それは困る」
みゆきは蔑んだ目で不破野を見すえると、ぷいっと背を向けた、次の瞬間。
プシュー!
「え?」
後ろから顔にスプレーを噴射された。みゆきは力が抜け、気を失って、不覚にも不破野の腕の中。
「みゆき。俺をあんな目で見たら、許さないよ」
「……」
どれくらい眠っていただろうか。
みゆきは静かに目を開けた。
「ん?」
ここはどこか。ベッドの上。なぜか猿轡を口にかまされていて声が出せない。
起きようとしたが、みゆきは頭の上に腕をクロスさせた状態で、手首を縛られている。
「!」
両足首もガッチリ拘束されている。大股開きではないのは武人の情けか?
(嘘でしょ!)
みゆきは自分が全裸だと知って愕然とした。しかし体にバスタオルを掛けられていて、胸と下は隠されている。
みゆきは身じろぎした。

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