《MUMEI》

「かんじのイイ人でしたねー……」

岸君涙目……。


「そう、大きい人だわ」

うわ、利恵さんたら意味深だあ。


「…………お、俺も大きいスよ!」

岸君たら見栄っ張り……!


「あはは、なんか岸君の言い方だと別の意味みたいだ。まあ、私達と付き合ってく度量は認めるよ。」

利恵さんタッパあるから岸君の頭を撫でてると生徒と教師みたいだ。


「きし、元気だして」

るりっちにまで励まされとる……。


「いんです、利恵さんと瑠璃ちゃんとこうして歩ければ幸せです。」

俺はその中に居ないらしい。


「岸君俺はあ?」

岸君と腕を組んでみた。


「瑠璃、コレが欲求不満よ。そしてアレを見ると欲情になるのよ。」

コレ呼ばわり……。
利恵さんが瑠璃ちゃんに俺を通して愛と肉欲について教育している。


「アレ呼ばわり……」

利恵さんの指先には乙矢君が居るじゃありませんか!
教材として指された乙矢は不本意そうだ。


「ア……ア……アレー!」

来てくれたんだ!
う、嬉じい〜……、嬉しすぎるよアレ(乙矢)君!
俺を今すぐ抱きしめて!


「コレ、どうすればいいですかね?」

軽やかにかわされた!
恋人のことを指差すし!


「ちょっとぉ、ウチじゃ対応しきれませんよ」

「名前も[コレ]にかかっているのよね、我ながら良いネーミングだわ」

「コレー。」

皆さん俺の扱いが雑……
るりっち頭ぺしぺし叩かんといてー……


「今年は岸君と瑠璃と三人で年始かよー。」

利恵さんは調理担当の俺が抜けたのが不服らしい。


「ええええええ!」

岸君の声は動揺なのに顔はニヤけてキモい。


「もー、美作家に行きたいよー!」

利恵さんの口から何故乙矢の名字が?


「あー……、姉の先輩ですか。」

乙矢が気付いたようだ。


「んー、まぶだち?」

利恵さん、カワイイポーズで言っても昔の肩書は消せません。

そうだよ乙矢姉ブイブイいわせてたもん。
乙矢姉とヤンキー繋がりか。
ロマンスを期待したのにつまらないな。

岸君たらまだ察知出来てないようだ……

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