《MUMEI》

「……新井田さーん、千秋様は大丈夫ですか。」

とんでもないことになってしまった。
千秋様に内緒で千守さんとの仲を取り持つことになるなんて……。



「眠ってるよ。
千秋さんは体が弱かったからね……。少し疲労が溜まってたのかも。」


「千秋様は大丈夫ですか!」

千秋様って体弱かったんだ……な、なのに僕は夜な夜な千秋様を怒らせては無理をさせて!
なんてことを僕はしてしまっていたんだ――――!


「明石君てば、落ち着いて。同じ言葉を繰り返してるだけだよ?」


「千秋様は大丈夫なんですよね……?」


「あのね、明石君……、千秋さんは二、三日したら前みたいに元気になるから、私の言う言葉を信じてくれるよね?」

新井田さんの繋いでくれた指が混乱を解いてくれた。
新井田さんの目は嘘をつかない。


「僕、千秋様に一杯無理させてしまいました……。友達なのに千秋様に迷惑ばかりかけて……」


「明石君、千秋さんは自分の気持ちを上手く現せない人種なんだ。特種な環境のせいで誤解されやすくもある。
千秋さんのことは時間をかけて知っていけばいいんだ、傍に居るだけで明石君は千秋さんの力になれることがあるかもしれない。」

傍に居るだけで……


「はい、僕頑張ります!」





「タマ五月蝿い……!」

うわー、元気無いのに千秋様を起こしてしまった!
なんて馬鹿なんだ!


「千秋さん喜んでるよ。」

新井田さんがこっそり教えてくれた。


「はわわわわ!」

新井田さんが教えてくれた方とは反対側の耳から発毛してしまった!
急いで掌で抑える。


そうなのかあ、千秋様喜んでいらっしゃるのかあ。
じゃあ、僕が千守さんとの兄弟仲を修復したら千秋様はもっと喜んで頂けるんじゃないか……?


よーし、頑張るぞー!

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