《MUMEI》

ぞっ、とする瞬間。





暗い部屋の隅に亡霊みたいに塊が膝を抱えていた。


「起きてたんだ。電気も点けないのかよ。」

昭一郎の部屋に我が物顔で入る。
俺は、知っている。



「……」

昭一郎は目の下に疲労の色を見せて、じっとしたまま俺を見上げた。


馬鹿な奴……
この体を駆け巡る優越感はなんなのだろう。




「……昨日何かあった?」

彼の唇が僅かに動く。
ちょっと意地悪過ぎたか。

「帰れ」

睨まれた。
俺は彼に近付けないでいる。

仕方ない、本人の意志だ、帰ろう。
俺に何が出来るわけでもないし。


「 ……あ、」

裾を掴まれた。


「――――――何?
帰って欲しいんだろ。それとも慰めて欲しい?まだ、抱かれた熱が忘れられないの?」

実の弟の肉体の熱が……。

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